PDFの基本からビジネス活用、セキュリティまで網羅した完全ガイド。実践的な使用例と効果的な管理方法を詳細に解説し、デジタル文書の新たな可能性を探ります。
PDFの基本的な特徴とは
PDFの定義と起源
PDFの定義
PDF (Portable Document Format)は、Adobe(以下、アドビ社)が開発したファイル形式です。
ファイル形式とは、わかりやすく言えばデバイスにそのファイルが何かを識別するために定めたルールのようなもので、デバイスはファイルの拡張子(原則3文字のアルファベットの文字列)を元に適切なアプリを起動させ、開示する仕組みをとっています。
アドビ社が提供・公開しているPDFリーダーやブラウザで閲覧、編集ができます。
PDFは .pdf を拡張子とし、テキストだけではなく画像、イラスト、図表も作成者が編集アプリでデザインしたとおりに書き出してくれるのです。
またMicrosoft(以下、マイクロソフト社)のワードやエクセルが、
- 紙に印刷するか
- PDFに出力するか
を選択できるようになって久しく、それだけ多くのユーザーから支持され、使われています。
PDFの起源・年表
PDFの起源は、日本ではまだパソコンやインターネットが、一般的に普及していなかった平成初期の1991年にまで遡ります。
実は世界中のユーザーが、パソコンを使うきっかけとなった Windows 95 の登場よりも先だったのです。
ちなみにPDFは次の時系列で、普及し、現在に至ります。
1991年 アドビ社内で“PDF開発プロジェクト”が発足
1992年 PDF誕生
1994年 PDFリーダー『Adobe Acrobat Reader』無償配布開始
1996年 アドビ社内で国際規格を目指す方針を決定
2007年 仕様書をAIIM(Enterprise Content Management Association)に譲渡
2008年 ISO(国際標準化機構)から規格の承認を受ける※2
2010年 マイクロソフト社がOffice2010をリリース 以降、PDF出力機能を搭載
※1 仕様書=ファイル構造などが記されている
※2 ISO 32000-1:2008
ひとまずこの流れは、覚えておいていただきたいです。
PDFが他のファイル形式と異なる理由や特徴
PDFが他のファイル形式と異なる理由
PDFは、先述のとおり紙に印刷したときと同じように文書全体を表示・閲覧できるよう開発されたものであるため当然、画像をビューワーなどで適切に表示でき、アプリで編集できるよう開発されたJPEGやPNGとは、仕様(ファイルの構造など)が異なります。
PDFファイル形式としての特徴
そんなPDFにはファイル形式上、
- デバイスを選ばない
- 内容が変わらない
- 圧縮しても大丈夫
といった特徴があります。
多くのデバイスに対応
開発プロジェクトの当初の目標どおり、PDFは高い汎用性を実現しました。
- パソコン
- タブレット
- スマートフォン
など多くのデバイスで活用でき、ブラウザで編集できるほか、コピー機やプリンターで紙の文書をスキャンし、デバイスに送信してPDF化することも可能にしました。
改変されることなく保存可
PDFはファイル名を変えずに上書き保存しないかぎり、最後の保存したときの状態のままであり、内容が勝手に改変されることはありません。
そのため機密文書など重要な書類にも適用できるファイル形式として、公的機関や企業から厚い信頼を得ています。
圧縮しても画質が劣化しない
PDFは、Adobeが提供する圧縮ツールを使って、ファイルサイズを小さくすることも可能です。
JPEGの場合、圧縮するたびに劣化する性質(不可逆圧縮)がありますが、PDFは画質を保ちつつ圧縮させる(サイズを小さくする)ことができるのです。
PDFの普及の背景や理由
PDFの普及の背景
PDFを世界中のユーザーが使うようになった背景としては2つ考えられ、まず
- パソコン
- インターネット
の普及がベースにあります。
PDF の誕生からほどなくマイクロソフト社のOS、Windows 95 を搭載したパソコンが登場し、インターネット接続も容易にしたマシンだったことから、爆発的にヒットしました。
もうひとつは、マイクロソフト社の Windows 95 の発表に先駆け、アドビ社は1993年に仕様書を公開しただけではなく、その翌年にはPDFを閲覧できるソフト『Adobe Acrobat Reader』を無償で配布したのです。
採算を無視したと言える当時のアドビ社の英断は結果的に、PDF作成ソフトの莫大な需要へとつながりましたが、もしもアドビ社が仕様書を公開せず、PDFリーダーを高価で販売していたとしたら、形勢は変わっていた可能性が高いと言えます。
PDFの普及の理由
PDFが普及した理由は、
- IRSでの採用
- 国際標準規格化
- Officeへの搭載
の3つの追い風がプラスに働いたからです。
まずIRSとは、アメリカ合衆国の内国歳入庁のことで、日本の国税庁に当たる機関で、PDFが誕生して間もなかった1990年代半ばにIRSがPDFを導入したと言われており、これがきっかけで他の政府機関、企業、病院などもPDFを採用するようになったのです。
次に先の年表でお伝えしたように、PDFの国際規格化を目指していたアドビ社は、2007年に仕様書をAIIMに譲渡、翌年にPDFはISOの承認を受け、国際標準規格のファイル形式となりました。
これを機に、いわゆるオープンスタンダードの使用しか認めていなかった国家の政府機関も一気にPDFを導入したのです。
そしてマイクロソフト社のOffice 2010のリリース以降、ワードやエクセルで直接PDFに変換(作成)することが可能となり、多くのユーザーが気軽に使えるようになりました。
こうした流れで、世界中の政府、企業、個人がPDFファイルを使わない日はなくなっていったのです。
一般的なPDFの使用シーンや適用例
本項では、行政・仕事・家庭という3つのカテゴリで使用シーンや適用例を見ていきます。
行政
法令、手引き、パンフレットなど国や自治体は、国民や住民に広く知らせたい情報をPDFファイルにしてサイトのサーバーにそのままアップロードし、リンクを共有するかたちで公開していたりします。
仕事
回覧文書/通達文書/指示書/企画書/就業規則/社外秘/機密文書/プレゼン資料/営業提案書/製品カタログ/見積書/請求書/有価証券報告書/経営レポート/決算短信
会社員をはじめ働く人は、これらのPDFファイルをネット上にアップロードして、他の社員や取引先と共有したり、メールに添付してメーリングリストに送ったりしています。
また上場企業は、法律上義務付けられていることから投資家向けに有価証券報告書などを公開しています。
有価証券報告書のほか、経営レポートや決算短信などのIR情報をPDFファイルでサイトのサーバー内にアップロードして、ユーザーに提示している企業も少なくありません。
なお電子取引をされている、これから始める方がいましたら、2024年1月以降、改正電子帳簿保存法に基づきPDFなど電子データで、そのまま保存することが義務づけられましたので、対応していく必要があります。
家庭
子どもが持ち帰ってきた学校からの文書/郵送されてきた公共料金やクレジットカードの請求書など/病院でもらった医療費明細書や検査結果
など場所をとらずに保管するために、プリンターでスキャンしてパソコンに取り込みPDF化し保存するなど、紙に埋もれない生活を心がけている方もいます。
ビジネス文書を効果的に活用:PDFの利点
ビジネス文書としてのPDFのメリット
PDFはもともと、紙に印刷した文書と同じレイアウトで表示することが可能なファイル形式にすぎませんでしたが、誕生から30年以上が経ち、PDFに関するツールもかなり進化してきたと言えます。
アドビ社が公開しているAcrobatオンラインツールを使えば、以下のことが可能となっています。
PDFから他のファイル形式に変換
既存のPDFからワード、エクセル、パワーポイント、JPGのファイル形式に変換することができるようになっています。
PDFを編集できる
既存のPDFファイルを開いて文字入力、コメント、画像も追加できます。
そのほか複数のPDFを組み合わせてひとつのファイルに結合する、その逆(分割)も可能です。
PDFファイルを見ていて気になった余白部分などをトリミングしたり、不要なページを削除したり、ページの回転、並べ替え、抽出や挿入はもちろんページ番号を振ることもできます。
自由度の高い編集が可能になっていることが、ビジネス文書としてPDFを採用するメリットです。
PDFを活用することでの業務効率の向上やコスト削減の具体例
職場がPDFを活用し、紙ベースでの保存をやめた場合、
- コピー機での印刷
- 印刷物(重量物)の運搬
- ファイリング
- 書庫への格納
といった作業がなくなり時短、残業抑制が期待できます。
また製品カタログやパンフレットをPDF化し、印刷したものを取引先や見込み客に郵送、手渡しするのをやめれば、空いた時間に他の業務ができるようになります。もちろん
- 紙代
- インク代
- フラットファイル代
- ダンボール代
- 印刷費
- 輸送費
- ガソリン代
ざっくりとコスト削減できるのです。
ビジネスシーンでのPDF活用のベストプラクティスやケーススタディ
筆者が考えるベストプラクティスは、ズバリ決裁シーンです。
仕事は、上司や役員、会社の決裁(ハンコ)なしに先に進めることはできないわけですが、署名やハンコが順に押された書類が戻ってくるまでには相当の日数がかかり、顧客を待たせ、進捗が止まってしまうことが常でした。
しかし先で説明したAcrobatオンラインツールならPDFを共有して、閲覧したうえで署名や電子サインを依頼できるため、わざわざ直属の上司の机まで足を運ぶこともなく、タイミングが合えば数分で返ってくる場合もあり、スピーディな決裁ができるのです。
逆に上司や同僚から書類の閲覧や署名を求められるシーンでは、煩雑な業務に追われ、机に置かれた回覧文書を他の書類と重ねて置いて失念してしまう、紛失してしまうケースも起こりやすいのですが、PDFなら印刷することなくパソコン上で閲覧したうえで指定のフォームに入力して署名するだけでよくなります。
デジタル時代の文書管理:PDFの役割
デジタル化された業務環境での文書管理の重要性
職場環境がデジタル化していく傾向にある昨今、文書管理が仕事上、重要なウェイトを占めていくのは間違いありません。
紙での文書管理の多くは、スペース、重量といった物理的な観点から法律上、必要とされているものなどは一定期間保存し、期限を迎えたら廃棄という運用がなされていると思います。
ところがデジタルでの文書管理は、物理的な制約をほぼ受けないため業務終了後、すべて廃棄するようなことは避け、大容量のサーバーを確保できる資金力があれば原則、永久保存を推奨する企業もあるでしょう。
またデジタル化が進んだ業務環境下では、常にスピードが求められるはずです。
そのため過去から蓄積し続けかつ日々増えていく莫大な量の保存済みデジタル文書を、いかに
- 必要なときに
- 時間をかけずに
- 探し回ることなく
- ピンポイントで
ピックアップし、当時のまま参照できるかが重要となり、それを可能とした管理が必要不可欠となってくるでしょう。
PDFがデジタル文書管理においてどのような役割を果たしているか
サーバーの容量を使わずに保存可
冒頭、PDFファイル形式の特徴で圧縮しても画質が保たれる旨、解説しましたがPDFファイルは、質を下げることなく適切に圧縮してサイズを小さくすることができますので、サーバーの空きを増やしたい、なるべく多くのデジタル文書を保存したい場合に有効です。
もちろんデバイスのzipフォルダによる圧縮機能も、積極的に活用されるといいです。
改ざんできないようにしてから保存可
詳細は後述しますが最終更新日の編集内容で確定させたいPDFファイルは、これ以上、編集(改ざん)ができないように設定できます。
さまざまなファイル形式をPDFに統一化
さまざまなファイル形式を混載して共有フォルダに格納した場合、ありえるのが、
- どのファイル形式で残したかわからなくなった
- 社内の誰かがアクセスして勝手に上書きした
- アプリのバージョンが変わって開けなくなった
という事態です。
繰り返しとなりますがOffice 2010以降のワード、エクセル、パワーポイントから直接PDFに出力できるほか、近年、企業でも使用頻度が高まってきたGoogleドキュメントやスプレッドシートもPDF形式でダウンロードできますので、ほぼすべてのビジネス文書、もちろん画像も改ざんされにくいPDFに統一してから、会社が指定するサーバーに格納できます。
またPDFはリーダーのバージョンが変わっても拡張子が .pdf なら、たとえ30年前に作成したファイルでも開けますので、その点でも心配は無用なのです。
PDFを使用した文書管理の方法やツール
文書管理の方法
PDFで文書管理を行う際の基本はまず、どのファイル形式でも言えることですが、ファイル名を明確かつ規則的なものにすることです。
フォルダ名についても同様のことが言えます。
会社でファイル名設定のルールがある場合は、それに従います。
わからなければ会社の共有フォルダ内をチェックしてファイル名を見ていきます。
それでもわからない場合は同じ部署の先輩や直属の上司に確認しましょう。
特に明確なルールがなかった場合、推奨する命名法は、作成日もしくは最終更新日を記載するやり方です。
この方法なら更新日時で並べ替えると時系列で表示されます。
また手帳や業務日誌に記録しておけば、開きたいファイルが見つかりやすくなります。
文書管理ツール
文書管理ツールには格納する場所を提供するもの、ファイルを整理できるものがあります。
格納ツール
会社などが所有するデバイスや、サーバーは別にして以下が挙げられます。
- 外付けハードディスク
- クラウドストレージ(マイクロソフト社OneDrive、DropBoxなど)
整理ツール
先に紹介しましたがPDFファイルの整理に適しているのは、やはりアドビ社が提供するAcrobatオンラインツールです。
詳細は既に述べましたが結合や分割をうまく活用して、ファイルを顧客、案件、時系列などにまとめる、参照しやすいように細かく分けることもできます。
デジタルアーカイブやクラウドストレージとPDFの関連性
デジタルアーカイブとは文字どおり、デジタルで記録したものとなりますが、アーカイブには長期保存するといった意味合いもあり、政府、意識の高い企業などで積極的な取り組みが行われています。
政府の取り組みとして、デジタルアーカイブジャパン推進委員会・実務者検討委員会によるJAPAN SEARCHを紹介します。
日本文化の保存や継承、発信を目的にデジタルアーカイブを広く公開し、新たな価値創出、ビジネスへの利用などに役立てようとしたもので、PDFファイルでの資料が多数、見られるのです。
また企業では、創業から今日までの社史、蓄積してきたノウハウ、マニュアルなど重要な知的資産に該当する情報をデジタルアーカイブとして、後世に残そうとするものです。
PDFは、作成から長期間経過していたとしても、最新版のPDFリーダーで読み込めますが、意図せずファイルが破損する場合があります。
万が一に備え、複数台のハードディスクに格納し、4、5年おきに新しいハードディスクに移行させたり、クラウドストレージサービスも活用したりしたいものです。
デジタルアーカイブのための長期保存ガイドライン(2020年版)も参考にされてください。
PDFの安全性:セキュリティ対策とヒント
PDFファイルのセキュリティリスクや脆弱性
PDFという一見、盤石なファイル形式でも、セキュリティ上のリスクや、脆弱性の存在は否定できません。
しかしながら、アドビ社はAdobe セキュリティ速報で、脆弱性の存在が確認できた場合は脆弱性を解決すべくセキュリティアップデートを施し、サイトで公表しているほか、IPA独立行政法人情報処理推進機構で「Adobe 脆弱」といったワードで検索すれば情報を把握できます。
PDFのセキュリティ機能
PDFには、
- パスワード
- 電子署名
- セキュリティポリシー
というセキュリティ機能があり、設定が可能です。
パスワード
アドビ社によると、パスワードを設定することで特定のユーザーだけにPDFファイルを表示させたり、プリントアウトやコピー・編集を制限したり、PDFを保護できるとしています。
電子署名
また証明書を使用してPDFファイルを暗号化することで、受信した相手方は電子署名が送信者のものであることを確認したうえで、その相手方のみが文書の中身を見ることができるような設定が可能です。
セキュリティポリシー
さらに作成済みの多くのPDFファイルに、セキュリティを設定したい場合などは、一つひとつセキュリティ設定するのは正直、手間です。
そういった手間を省くセキュリティ手法がポリシーです。
あらかじめポリシーを作成しておけば、その設定内容をそのまま複数のPDFに適用できます。
安全なPDFの共有や配布の方法
PDFはLINEでもやりとりができ気軽に共有できるものではありますが、ビジネス文書については安全に共有・配布したいところです。
PDFリーダーを開くと右上に共有ツールがあり、アドビによると、
- 匿名またはパブリックリンク
- 電子メールに添付
- 表示または注釈用のパーソナライズされた依頼メールを送信
のいずれか最適なものを設定したうえで、相手方に送ることができます。
ただし相手方にPDFが共有されたかなどを確認したい場合は、詳細なトラッキング情報を見ることができる[表示または注釈用のパーソナライズされた依頼メールを送信]を選びましょう。
PDFに関連するセキュリティインシデントの事例とその対策
セキュリティインシデントとは、政府や企業のサーバーなどが悪意のある者からセキュリティ上の攻撃を受けること、攻撃に伴う情報漏洩といった重大事故を指します。
事例
アドビ社は、2023 年 9 月 12 日付でAdobe Acrobat Readerを標的とした限定的な攻撃を受けたことと、脆弱性が悪用されていることを確認したと公表しています。
https://helpx.adobe.com/jp/security/products/acrobat/apsb23-34.html
上記インシデントは、万が一、悪用された場合に不正なネイティブコードが実行され、領域外メモリーへの書き出しが行われるおそれがあり、アドビ社はその緊急度を最も重いクリティカルとしました。
対策
この事例については、アドビ社が最新のソフトウェアを用意し、それをインストールし、バージョンアップすることで解決する旨が、案内されていました。 ちなみにAdobe Acrobat Reader は(オンラインであれば)自動でアップデートされる設定となっていますが、不安な方は、バージョンを確認するようにします。
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