Cher Threinen-Pendarvis 著
それぞれの水彩画の作品には、独自の感覚が表現されています。同じ画材と補色の色使いを連続して使用することもあります。柔らかい色使いの水彩画である『Water Lilies』(睡蓮) は、Corel PainterとWacom® Intuos®の筆圧感知タブレット/スタイラスを使用して制作しました。
水彩画のウエット・イン・ウエット(Wet-into-Wet)技法を使用してから、ディテールとテクスチャを追加しました。ウエット・イン・ウエットは昔からある水彩画の技法ですが、Painterの水彩レイヤーで再現することができます。ウエット・イン・ウエットでは、多くの水分を使用して色を塗ります。用紙に塗った色が乾く前にその上から別の色を塗り重ねることで、その色と元の色を混ぜ合わせます。水彩レイヤーにより、ブラシを使用して絵具を用紙の紙目に浸透・拡散させて、乾燥前の元の絵具とブレンドすることにより淡い色合いを表現できます。
この水彩画には、3つの資料を使用しました。それは普段使用しているスケッチブックに鉛筆で描いたスケッチと、屋外で撮影した2枚の写真です。『Water Lilies』(睡蓮) は、白紙のキャンバスから描画しました。資料をモニタの横にクリップで留め、これを参考にしながら描画しました。スケッチをスキャンしてPainterにインポートして使用することもあります。
1.リアル水彩ブラシ
描画を開始する前に、私がよく使用するリアル水彩ブラシをいくつか紹介します。リアル水彩は多機能なブラシ カテゴリで、多彩なストロークやウォッシュの描画、テクスチャの追加などが可能です。新しいファイルを開いて、ブラシを使用してみましょう。[ファイル] – [新規] を選択して、[新しいイメージ] ダイアログ ボックスで幅と高さを「600 x 600 ピクセル」に設定します。
ブラシ トラッキングの設定
Painter で描画を開始する前に、ブラシ トラッキングを設定しておくと、スタイラスの筆圧や速さなどのパラメータを使用してCorel Painterでのスタイラスの反応をカスタマイズできます。[編集] – [環境設定] – [ブラシトラッキング] (Mac OS X では、[Corel Painter 12] – [環境設定] – [ブラシトラッキング]) を選択し、ウィンドウで基準となるブラシストロークを描画します。たとえば、スケッチの速度に変化をつけるとともに筆圧にも強弱の変化をつけて描画する場合は、ウィンドウでそれらの要素がすべて含まれるようにブラシストロークを描画します。
ストロークとべた塗りの描画
[ブラシセレクタ] をクリックして [ブラシライブラリ] パネルを開きます。まず最初に、[ブラシセレクタ] で [Real Wet Watercolor] ブラシ カテゴリを選択し、[リアル楕円ウォッシュ] バリアントを選択します。 [リアル楕円ウォッシュ] を使用して、太いストロークと細いストローク、フラット、さらにカラー ウォッシュをペイントします。フラット ウォッシュをペイントするには、[リアル楕円ウォッシュ] ブラシを使用して、絵具が乾燥前の拡散しているときにストロークを重ねます ([リアル水彩] ブラシを選択してイメージにブラシストロークを描画すると、イメージには自動的に新しい水彩レイヤーが作成されます)。後から絵具が乾燥して定着し、ストロークを重ねた部分の中心に色の濃い領域が作成されます。
ストロークとウォッシュの色の合成
[リアルウェットブリスル] ブラシを使用すると、太いストロークでもストロークの最初と最後にブリスルを表現できます。中間の青色を選択してストロークを描画します。中間の緑色を選択してストロークを重ねて描画ます。2 番目のストロークは、実際に水彩画でウエット・イン・ウエット技法を使用したときと同じように、青色のストロークの一部と反応します。
さまざまなフラット ストロークの描画
[リアル平筆] バリアントを使用すると、スタイラスの筆圧に応じて太線から細線までペイントできます。図のように、ストロークの最後には、わずかなブリスルが表現されます。[リアルウェット平筆境界] は、ストロークの境界部分に沿って淡い色合いと色のたまりをペイントします。[Real Wet Thin Flat] も色を重ねて塗ったときに反応を起こします。
さまざまなテクスチャの描画
テクスチャの描画によく使用するブラシは、[リアルウェットスポンジ] と [フラクタルウォッシュ (水彩)] の 2 つです。イメージの上部には、[リアルウェットスポンジ] を使用して青のテクスチャをペイントしました。イメージの下部には、[フラクタルウォッシュ (水彩)] を使用して青と緑のテクスチャをペイントしました。
『Water Lilies』(睡蓮) 用の新しいファイルの設定
2.水彩画用の新しいファイルをセットアップして開く
水彩画で使用するいくつかのリアル水彩ブラシを紹介したところで、次に水彩画の制作プロセスを説明します。まず最初に[ファイル] – [新規]で新しいファイルを作成します。[新しいイメージ] ダイアログ ボックスで、幅と高さを「1500 x 1800 ピクセル」に設定し、テクスチャを選択します (私は [フランス水彩紙] を選択しました)。カラー タイルが白に設定されていることを確認し、[OK] をクリックします (使用するブラシのサイズはイメージのピクセル サイズに応じて異なります)。
[リアル鉛筆(2B)] バリアントで描画した鉛筆スケッチ
3.新規レイヤーで鉛筆スケッチを作成する
[カラー] パネルで中間の灰色を選択し、[ブラシセレクタ] の [鉛筆] から [リアル鉛筆(2B)] バリアントを選択してスケッチをします。[レイヤー] パネルの [新規レイヤー] ボタンをクリックして新規レイヤーを作成します。新規レイヤーにスケッチを描画すると、不透明度と合成方法を調整できるようになります。私は資料をコンピュータの横に置き、参照しながらスケッチをしました。必要に応じて、スケッチをスキャンして Painter で使用することもできます。
[リアル楕円ウォッシュ] バリアントを使用した滑らかなウォッシュの描画
[レイヤー] パネルのアクティブな水彩レイヤー。スケッチ レイヤーは表示されていません。
[リアル水彩] の [リアル楕円ウォッシュ] および [リアルウェットフィルバート] バリアントを使用した淡い色合いのさまざまなウォッシュの追加
睡蓮の浮葉と水に濃い青色をペイントして、花の淡い色合い際立たせています。この例では、スケッチ レイヤーの不透明度は 50% です。
4.最初のウォッシュをペイントする
『Water Lilies』(睡蓮) の水彩画では、大胆なブラシの動作で豊かな表現を実現しています。色を追加する前に、ブラシストロークを練習してみましょう。Ctrl/1 ~ Z キーを押すと、いつでもブラシストロークを取り消すことができ、また、[レイヤー] パネルで練習用の水彩レイヤーを選択して [削除] ボタンをクリックすると、その水彩レイヤーを削除できます。
カラー ウォッシュを追加するときに、淡い色から濃い色に変化させます。[カラー] パネルで淡い色を選択します (私は淡いターコイズ ブルーを選択しました)。[ブラシセレクタ] で、[リアル水彩] から [リアル楕円ウォッシュ] バリアントを選択します ([リアル水彩] ブラシを選択してイメージにブラシストロークを描画すると、イメージには自動的に新しい水彩レイヤーが作成されます)。スタイラスの筆圧を軽く均一にすると、[リアル楕円ウォッシュ] でウォッシュ領域に円滑に移行できます。ブラシを少しだけ広げると、描画したブラシストロークが少しブレンドされます。新しいストロークを描画すると、前のストロークの横に配置されて、わずかに重なります。領域を暗くする場合を除いては、ブラシでこすったり、上から何度も重ねてペイントしたりしないでください。私の場合、もっと大胆なストロークの太さの変化を表現したいときには、[リアル水彩] の [リアルウェットフィルバート] バリアントに切り替えています。Painter の [リアル水彩] は、本物の透明な水彩絵具のように機能します。描画対象の形状の向きに従ってストロークを描画します。淡い色のウォッシュ領域を完成させます。用紙の白の部分をそのまま残すと、「シースルー」のような効果が得られます。ペイントの変化が速すぎる場合は、プロパティ バーの [不透明度] スライダを使用して、ブラシの不透明度を低くします (私は花、浮葉、水の淡い色のウォッシュに 30 ~ 70% の不透明度を使用しました)。
花のソフト ウォッシュは、[リアル水彩] の [リアル楕円ウォッシュ] バリアントを使用してペイントしました。テクスチャ ウォッシュは、[リアル水彩] の [リアル紙目ウォッシュ] および [フラクタルウォッシュ] バリアントを使用してペイントしました。この例では、スケッチ レイヤーは表示されていません。
5.中間色を塗り重ねる
中間値の色を使用して、中間色を作成し、淡い色から徐々に濃い色をペイントして、フォームの作成を続行します。淡い色のソースを覚えておき、フォームの向きに従ってストロークを描画しましょう。描画中にブラシのサイズや不透明度を変更するには、プロパティ バーの対応するスライダを使用します。私は、自然なゆったりとしたブラシストロークを維持しながら、明るい黄色と青色を徐々に濃い色へと変化させました。
そして中間色のステージを完了してから、[リアル水彩] の [リアル紙目ウォッシュ] に切り替えました。これにより、新しいストロークをウエット・イン・ウエットとしてブレンドしながら、一部のウォッシュ領域とストロークの最後にブラシストローク テクスチャを追加することができます。
花のモデリングは、[リアル水彩] の [リアル楕円ウォッシュ] および [リアルウェットフィルバート] バリアントを使用してペイントしました。
6.ウエット・イン・ウエットのテクスチャ ウォッシュの描画
Painter には、実際の水彩画で使用されているテクスチャやにじみの各種効果を再現できるブラシが用意されています。モップのようなブラシで水彩テクスチャ ウォッシュを描画する場合は、いずれかの [フラクタルウォッシュ] バリアントを使用します。[カラー] パネルでわずかに異なる色を選択し、その新しい色を元の色の領域に軽く塗り付けます。私は [フラクタルウォッシュ] と [フラクタルウォッシュ (境界)] を使用して、色の濃い水の領域に濃い青色とターコイズ カラーを使用しました (滑らかな曲線のストロークを使用)。これらのウォッシュ バリアントにより、元の色を移動しなくても、新しい色と元の色を混ぜ合わせることができました。次に、[リアル紙目ウォッシュ] バリアントを使用して濃い青色を睡蓮の浮葉に追加しました。さらに花に色を追加するために、[リアル楕円ウォッシュ] を使用しました。
このディテールは、睡蓮の浮葉に対するほぼ最後のブラシストロークであり、[水はね (ドライ)] ブラシが最も手前にある浮葉に使用されています。
ディテールとテクスチャを追加して完成した水彩画
7.ディテールをモデリングして追加する
ディテールを鮮明に描画するには、ディテールを別のレイヤーにペイントすることをお勧めします。ただし、ウエット・イン・ウエットのソフトな外観を残したかったので、今回は同じ水彩レイヤーを使用しました。小さな [リアルウェット細筆] バリアント (6 ~ 8 ピクセル) を使用して、定義を必要とする鮮明な境界を領域に追加します。[リアルウェット細筆] のサイズを小さくするには、プロパティ バーの [サイズ] スライダを使用します。[リアルウェット細筆] の彩度が高すぎる場合は、プロパティ バーの [不透明度] スライダを使用して不透明度を 50% 程度まで下げます。境界部分をソフトにするには、[リアルウェットブリスル] および [リアルウェットフィルバート] バリアントのサイズを小さくして (6 ~ 10 ピクセル) 使用してみてください。多彩なストロークを使用するには、スタイラスの筆圧を変化させます。私はディテールの描画に、[リアルウェット細筆] および [リアルウェットフィルバート] バリアントを使用して、曲線のブラシストロークを追加し、花の内部の小さい領域に色を塗りました。また、[リアルウェットブリスル] を使用して、花の下の陰影の領域に少し色を追加しました。一部の鮮明なストロークを分散させるために、[カラー] パネルで淡い色を選択してから [リアルウェットフィルバート] バリアントを使用して、[リアルウェット細筆] でペイントした色を直線的なストロークにより、軽くこすり取りました。
[消しゴム] ブラシのバリアントを水彩レイヤーに使用することはできません。キャンバス、つまりイメージ レイヤーに [水彩消しゴム] や [ブリーチ] バリアントは使用できません。水彩レイヤーの色を滑らかに削除するには、[リアル水彩] の [水彩消しゴム] バリアントまたは [水彩] の [消しゴム(ドライ)] バリアントを選択します。[レイヤー] パネルで、編集してブラシで領域を明るくする水彩レイヤーの名前をクリックします。私は [水彩消しゴム] バリアントを使用して、睡蓮の花と浮葉を明るく強調しました。
最後に、淡い斑点が付いたテクスチャを最前面に追加して、目を引くようにしました。イメージに水はねを描画するには、[リアル水彩] の [水はね (ドライ)] バリアントを選択して水はねを追加する領域に曲線のブラシストロークを描画します。自然な外観にするために、描画時にブラシのサイズを適宜変更してください。
Cher Threinen-Pendarvis
Cher Threinen-Pendarvis 氏は『The Painter Wow! Book』の創刊者です。『The Painter Wow! Book』の著者以外に、優れたアーティスト、デザイナー、教育専門家としての顔を持ち、『The Photoshop and Painter Artist Tablet Book: Creative Techniques in Digital Painting』および『Beyond Digital Photography: Creating Fine Art with Photoshop and Painter』 (Donal Jolley 共著) の執筆も手がけています。
子供の頃からアートの世界に憧れていた Cher 氏は、常に伝統的なアート ツールを使用しています。また、Cher 氏はデジタル アートの先駆者でもあり、1987 年から Macintosh コンピュータを使用してイラストを制作しています。出身はカリフォルニアで、現在、サーフボード デザイナーである夫とともに海岸沿いの土地で生活しています。彼女はサーフィンとアートの両方を満喫しており、サンセットクリフスで頻繁にサーフィンを楽しんでいます。人生でサーフィンに出会えたことを感謝し、サーフィンではすべての波をプレゼントのように思っています。
Cher 氏はアーティスト ツールとして Painter を愛用しており、Painter 開発者のコンサルタントやデモ アーティストとして活躍しています。アートワークは世界各国で展示され、論文とアートはさまざまな書籍や定期刊行物で出版されています。大学では水彩画と版画を専攻し、 美術学士 (BFA) を取得しています。彼女は、San Diego Museum of Art Artist Guild のメンバーです。世界中の Corel Painter と Adobe Photoshop のワークショップで講師を務めた経験があり、現在はコンサルティング会社 Cher Threinen Design の代表です。Cher 氏の詳細については、Web サイト (www.pendarvis-studios.com) を参照してください。
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