はじめに

ペースの速いファッションと繊維デザインの世界では、時代を先取りすることは単なる目標ではありません。これは、競争力を維持するために必要なことです。この業界は、創造性、革新性、そして変化する消費者の要求に適応する能力で繁栄しています。しかし、ファッション・繊維業界は、デザイン技術の導入が遅れています。

このレポートでは、ファッションおよび繊維業界におけるデザインプロセスの現状、時代にそぐわない技術がもたらす悪影響、デジタルデザインツールへの投資による生産性向上、創造性と仕事の質を高める方法を探ります。

このレポートでは、ファッション講師、デジタルスキルトレーナー、CAD for Fashionの創設者であるエリカ Horne氏に、ファッション講師、デジタルスキルトレーナー、デジタルスキルのギャップをよりよく理解するために、専門知識の提供を依頼しました。

ファッション・繊維業界における既存のデジタルスキルのギャップに対処する方法と、最先端のデザインツールを使用して自信を持って創造性とデザインを開発する方法について、詳しくご紹介します。

ファッション・繊維業界におけるデザインの現状

ファッションと繊維業界には、職人技の豊かな歴史があります。伝統的な設計プロセスには、何世代にもわたってデザイナーに受け継がれてきた多くの手作業が含まれています。しかし、技術が進歩し、設計プロセスが進化するにつれて、デジタル設計ツールの統合が必要になってきています。

現在、ファッションおよび繊維業界とその周辺事業では、それぞれのレベルでデジタル統合を進めています。伝統的な技術を使用する高級品市場では3Dデザインへの関心が高まり、ハイストリートブランドではレンジ構築やプリントデザインにデジタルデザインツールを使用しています。

アパレルブランドは、製品タイプのグラフィックな性質から、デジタルデザインツールの効果的な使用において先頭をはしっており、アパレルブランドでは、より強力なデジタル教育の恩恵を受けたグラフィック出身のデザイナーが集まることが多くあります。サプライヤーは他の業界に遅れをとっており、デザイナーは非常に基本的なレベルのCADを使用しており、多くの場合、すぐにサンプリングすることを好みます。

「縫製工場でデジタルデザインソフトウェアが使われている場合、デザイナーは写真ベースのCADアプリケーションを使って、ソースのプリントデザインを手作業でスケッチし、衣服の形に落とし込み、非常にシンプルで様式化されたデザインビジュアライゼーションを作成していますが、精度に欠けることがよくあります。

この業界は、従業員がスキルを向上させて転職することや給料アップすることと、非常にペースの速い競争の激しい市場が、どんなにムダがあっても物理的なサンプルを重視するのではないかという懸念から、デジタルデザイントレーニングへの投資を躊躇しています」とエリカ氏は述べています。

プリントとテキスタイルデザインは、上記の各分野と交じわり、高品質で手描きの労働集約的なデザインと、より商業的なデジタルデザインのプリントやグラフィックに分かれています。デジタル設計ツールは、量産可能な設計を技術的に実行するために不可欠です。しかし、現在、必要なスキルは学校で教えられていません。

「CAD for Fashionでプリントデザイナーをトレーニングすると、アートワークのクリーンアップやリピートの作成に時代遅れで時間のかかる方法を使用していることがよくわかります。彼らは、色分解と正確なカラーマネジメントのための適切なスキルとソフトウェアを持っている印刷工場自体に大きく依存しています」とエリカ氏は言います。

学校では、ファッションとテキスタイルデザインのプログラムでは、次のような伝統的な技術とスキルが引き続き重視されています。

• 手描きのイラスト
• スクリーン印刷とブロック印刷
• 手作業によるパターンメイキング
• 生地の操作

職人技や芸術的スキルを維持するため、伝統的な技術を学ぶことは重要ですが、教育機関は CorelDRAW Graphics Suite などのデジタル デザイン ツールをプログラムに組み込むことで、技術の進歩を受け入れる必要があります。

Hassan & Oluwafemi(2018)による研究では、デザインを学ぶ学生の創造的行動に対するCADの効果を調査しました。その結果、以下のことがわかりました。

• 紙と鉛筆、そしてCADの両方で作業することで、学生はデザイン作業で創造性を表現に役立った
• CADを取り入れることで、学生の創造力が高まった
• カリキュラムにCAD関連の授業を加えることは学生に役立つ

これらのツールを取り入れることで、教育機関は業界の変化に対応し、将来の卒業生が成功するために必要なスキルを身に付けることができます。伝統的な技法とデジタルツールの両方に習熟した卒業生は、繊維業界を切り開くためのより良い能力を身につけられます。

デジタルデザインスキルを身につけるメリット

ファッション・繊維業界は、他の多くの業界と同様に、テクノロジーの急速な進歩と、そのテクノロジーを効果的に活用できる労働力の必要性によるデジタルスキルのギャップに直面しています。この問題は、今日の職場で成功するために必要な基本的なデジタルスキルだけでなく、業界や役割に特化したソフトウェアが必要な場合、より深刻になります。

57%の企業が
熟練した労働力不足により
人材確保が課題

MOTIFのグローバル調査
2020年のアパレル業界におけるスキルの現状

さらに、「世界がますます困難な不況に突入するなか、将来にふさわしく、進化するビジネス需要に対応できる労働力を持つことが、戦略的成功の鍵となります。生き残り、成功する企業は、コスト削減するだけでなく、将来に向けたイノベーションに注力した企業です。 (MOTIF、2020年)。

デジタルスキル開発への投資には、多くのメリットがあります。業界がデジタルトランスフォーメーションを遂げるなか、これらのスキルの価値はますます高まっており、生産性、創造性、競争力の向上につながっています。デジタルデザインのスキルは需要が高く、これらのスキルを習得することで、潜在的な雇用主にとってより魅力的な人材になります。

デジタルスキルを持つプロフェッショナルは、転職で競争力を持つことが多く、デジタルスキルに投資する企業は、市場の変化や消費者のトレンドに迅速に対応できるため、技術の進歩の最前線にとどまり競争上の優位性を得ることができます。

ファッションとテキスタイルデザインの多くの側面は、デジタルツールによって合理化されています。

• デザイナーはより効率的に作業をこなせる
• リードタイムが短縮され、生産性が高くなる
• 物理的なサンプルが作成される前に重要な決定が行われムダを削減

「CADを使用してデザインの選択肢を絞り込み、サンプリングする前にプリントの色を直していたのはハイストリートのサプライヤーのデザイナーだった私だけでした。バイヤーは、20以上のスタイルを提案するもののその枠はほんの一握りでした。良質のデザインビジュアライゼーションをすばやく作成するだけで、時間、配送、材料、費用、労力を半減できました」とエリカ氏は言います。

最後に、デジタルデザインツールは、徹底したアイデア開発を可能にすることで、デザイナーにより大きな創造的な可能性を提供し、より革新的で魅力的なデザインにつながります。さらに、設計プロセスの早い段階で、より協調的なアプローチが可能になります。

デジタル設計ツールにより、デザイナーが高品質の設計を短時間で作成するには

デジタルデザインツールは、デザイナーが高品質のデザインを短時間で自由に作成できるようにすると同時に、創造性と自信を高める可能性も秘めています。CorelDRAW Graphics Suite などのデザイン ソフトウェアは、ファッションやテキスタイルデザインの世界に革命をもたらし、クリエイティブなプロセスを強化し、実験や探求を可能にするさまざまな機能を提供しています。

デザインツールは、デザイナーがアイデアをより自由に視覚化し、探求するための無限の空間を備えたデジタルキャンバスを提供します。これらのツールを通じて、デザイナーはプロジェクトを完全にクリエイティブにコントロールできるため、さまざまな形、色、構成を試し、制約なしに新しいクリエイティブの方向性を発見できます。

たとえば、デジタル(ベクターベース)デザインは、品質を損なうことなく簡単にスケールアップまたはスケールダウンできますが、これは従来のデザインプロセスの大きな制約でした。デジタルツールが提供するもっとも強力な機能のひとつは、設計の迅速な反復と変更です。

ここで、デザイナーにとってのメリットをいくつか紹介します。

• 変更を加えて、すぐに効果を確認できる
• 創造性を高め、さまざまなコンセプトを追いかけられる
• シルエット、色、パターン、テクスチャーを幅広く試せる
• 手作業でデザイン全体を作り直す必要がなくなる
• 取り返しのつかないミスを恐れずに自由に作業できる
• デザイン精度の向上
• より複雑なデザインの作成

これらのソフトウェア製品の多くには、デザイナーが作品の構成要素として使用したり、インスピレーションを刺激したりして、将来のプロジェクトの設計プロセスを簡素化できる、既成の設計要素のライブラリが含まれていることがよくあります。これらの補助をソフトウェア内で操作および編集できるため、デザイナーは写真やイラストなどのデジタル資産を簡単に組み入れることができ、従来の方法と比較して多くの時間を節約できます。

さらに、デジタルファイルは、物理的なスペースを占有することなく、将来参照するときのために簡単にアーカイブ化、カタログ化できます。 「CAD for Fashionのトレーニングの一環として、私たちは一緒に仕事をするデザイナーに、衣服の形状、トリム、テクスチャー、その他の交換可能な資産のコラボレーションライブラリを開発することを奨励しています。これらのライブラリを CorelDRAW Graphic Suite の [アセット インスペクター] パネルなどのクラウドベースの機能に保存することで、すぐにアクセスして共有できます」と エリカ氏は述べています。

多くの強力なデジタルデザインソフトウェアの豊富な機能を活用することで、デザイナーは、革新的なアイデアの調査、探求、高品質で魅力的なデザインの制作など、より創造的な作業に集中できます。この創造的自由と生産性の組み合わせにより、デザインツールは、従来の手法に代わる魅力的な選択肢として欠かせないものになっています。

ただし、印刷物とテキスタイルデザインでは、両方のアプローチが共存し、組み合わせて使用できることに注意することが重要です。デジタルデザインツールには多くの利点がありますが、伝統的な技法にもそれぞれメリットがあり、最終的にデジタルと従来の技法どちらを選択するかは、プロジェクト、求める美的感覚、および利用可能なリソースによって異なります。

多くのテキスタイルデザイナーは、ハイブリッドアプローチがもっとも柔軟性があり、クリエイティブな可能性を高め、一定の時間内に生産できる高品質のアウトプットの素晴らしさを高めていることがわかっています。

アパレル・繊維業界がデザインツールの統合がもたらす影響を十分に享受するためには、デザイナーやリーダーが移行を促進するための理解とスキルレベルを高める必要があります。

MOTIF(2020年)のコース開発ディレクターであるジャッキー・ルイス氏によると、「業界内で必要なレベルの変革を推進するための熟練した人材が不足している」ため、今年の調査では、現在の従業員のスキルアップを検討している企業が増えており、46%がこのことを優先事項であると回答しています。

「この業界では、教育におけるデジタルスキルに対する考え方を大きく変える必要があります。トップから始めて、これらの将来のスキルを統合的な方法で奨励および育成するには、その背景を完全に理解する必要があります。私は学生が取り組んでいる授業とは関係のない散発的なCADセッションを実施するために大学に行っています。コンテキストの欠如と、アウトプットが評価されないという事実が相まって、学生のやる気をなくし、トレーニングが非効率になる一因となっています」とエリカ氏は言います。

テクノロジーは急速に進歩しており、このギャップは介入しなければ広がる一方です。業界、教育界、技能訓練提供者が協力してデジタルスキルのギャップを埋めることができれば、自信、生産性、創造性が劇的に向上し、成果の質と消費者の満足度にプラスの影響を与えるでしょう。

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この記事は Fashion and Textile Design Report: Unlocking your creativity and confidence through modern design tools を翻訳したものです。